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【第2回】純音聴力検査を見直す|検査の性質と難しさ

前回のコラムでは、純音聴力検査が耳鼻咽喉科診療における診断・治療方針・補聴器診療の出発点であり、聴覚診療の質を支える重要な情報であることをお伝えしました。

今回は、第2回として、「純音聴力検査の性質と難しさ」についてお話しします。

純音聴力検査は、一見すると単純な検査に見えますが、実際に経験し、症例数を重ねるほど、検査の難しさを実感する検査です。
今回のコラムで押さえたいポイントは、次の3つです。

・検査の性質
・検査の難しさ
・検査者の心構え

どういう検査であるかを理解しておくと、つまづきやすいポイントも把握しやすくなります。
検査担当のコメディカルの方はもちろん、耳鼻科医の先生方にも検査のふりかえりになるのではないかと思いますので、ぜひ参考にしていただけると幸いです。

改めて、純音聴力検査とは?というところからお話したいと思います。
純音聴力検査は、最も簡便に、短時間で正確な左右別の聴力閾値を調べることができる検査です。

しかし、単純に「ピーと鳴ったらボタンを押す検査」ではなく、被検者の応答をもとに閾値を決定する、非常に繊細な主観的・行動学的検査です。
純音聴力検査に関わるすべての方に知っておいてほしい検査の性質として、「心理物理学的な検査」「主観的検査」「検査者依存が強い」の3つがあります。

心理物理学とは、「物理的な刺激の強さと、人間が主観的に感じる感覚や知覚の対応関係を数値化する学問」のことです。
つまり、純音聴力検査は、物理的な音と主観的に感じる音(聴覚)の対応関係を数値化し、その最小可聴値(聴力閾値)を調べることで被検者の聞こえの度合いを把握できる検査になります。
聞こえるか聞こえないかの境目を調べるため、被検者は、「とにかくわかりにくくて嫌」と感じる検査であることはイメージしやすいと思います。

また、被検者の理解力や集中力、応答の慎重さ、検査者の説明内容や検査音呈示の方法、閾値判断などが結果に大きく影響する、主観的な検査でもあります。
加えて、結果を判読する側の解釈にも主観が入るため、より不安定な結果・解釈になりやすい傾向にあります。

検査者が、医師の所見や患者の主訴から「おそらく感音難聴だろう」というような先入観を持って検査に臨んでしまったり、妥協(サボる)していい加減に閾値を記録できてしまう、というような検査者依存性が高い検査であることも十分に理解しておく必要があります。

純音聴力検査の難しさは、検査者、被検者ともに「心理物理学的な仕事」を求められることで信頼性の判断が鈍る、ということに集約されていると思います。

‐検査者が音を提示する。
‐被検者が音に気付く。
‐「聞こえた」と判断する。
‐ボタンを押すなどで応答する。
‐検査者は応答が正しいか判断する

さらに、このフローの中にも、被検者自身の判断(耳鳴との判別の程度や聞こえているか迷った時に応答するのかなど)と、検査者の判断(本当に聞こえていて応答しているのか、機器の装着は適切かなど)などの「心理物理学的な仕事」が数多く存在します。

感じ方に個人差があり、解釈の仕方も人それぞれ違う聴覚という「曖昧な感覚」を数値化するには、検査者が被検者の様子をつぶさに観察しながら、臨機応変に適切な説明や手技を行い、正確に応答できる環境を整える必要もあります。

一方で、何をもって正しい検査結果であるのかがわかりにくいのも純音聴力検査の難しさです。
精確な検査手技で実施され、他の情報(主訴、医師の所見など)と比較・検証して初めて正確性を確認できる場合もあるので、純音聴力検査のみで正確な結果と判断できない点も、一筋縄ではいかないところです。

被検者、検査者、判読者それぞれの判断や解釈が入り混じること、そして他の情報と組み合わせて結果の妥当性を推測しなければならないことが、純音聴力検査の難しさをさらに深めています。

検査者は上記のような検査の性質を理解し、次のような心持ちで検査に臨むべきだと考えます。

・診断・治療に直接つながる
・妥協しない
・検証を続ける

・医の心をもって接する

得られた検査結果は、患者さんのQOLに直結します。純音聴力検査のみで診断・治療方針が決定することも少なくないため、自分が行った検査の結果で患者さんのその後の生活を左右してしまうという認識を常に持ち続けなければなりません。

偉そうにお話をして大変恐縮ですが、私自身もこのような意識を最初から持っていたわけではありません。
15年ほど前の私の検査結果は見るに堪えないレベルで、その結果を医師に報告していたという恐ろしい時期もありました。(先輩が再検したり、先生方がフォローしてくれていたため、患者さんの負担は大きくならずに済んでいました。)

また、検査者が妥協した分、患者さんはもちろん、先生方や同僚の方にも大きな負担がかかりますので、検査者には「これでいいや」ではなく「もっと正確に」という心持ちで検査に臨んでほしいと思います。
そして、妥協せずに実施した検査結果について検証を繰り返していただきたいです。
何をもって正しいのかが分かりにくい検査であるため、他の情報(主訴、医師の所見・診断、他の聴覚検査など)と比べてみて、「なぜこのような結果が得られたのか」の検証を継続することが、検査技術向上の鍵だと感じています。

最後に、忘れてはならないのが、医の心を持って検査に臨むということです。
医の心とは、単なる医療技術だけでなく、患者さんの不安や苦しみを理解し、思いやりの心をもって接するということです。
ここで言いたいのは、「患者さんの検査への気持ちを前向きにする」ことも正確な結果を得るうえで大切だということです。
患者さんの協力なしに診断につながる結果は得られません。
ぜひ、患者さんが落ち着いて検査に臨める環境作りにも気を配りながら検査に臨んでみてください。

今回は、「純音聴力検査の性質と難しさ」についてお話ししました。
次回は、純音聴力検査の精度を高めるうえで欠かせない、「検査中の患者さんの観察」について取り上げます。

お気付きになった方もいらっしゃると思いますが、今回の内容は、「聴覚検査の実際」の“聴覚検査を行うに際して”という立木先生のお言葉に、私たちが経験を通して感じたことを盛り込んだ内容となっています。
立木先生のコラムには、まさに私たちがお伝えしたい内容が書かれていますので、必読です!


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