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【第1回】純音聴力検査を見直す|聴覚診療の質を支える「最重要情報」

今回からは、「純音聴力検査シリーズ」と題して、耳鼻咽喉科診療の基本であり、診断・治療方針・補聴器診療の出発点となる純音聴力検査について、複数回に分けてお伝えしていきます。

このシリーズでは、実際の臨床現場で起こりやすい課題や見落としやすいポイントを中心に、明日からの検査・診療に活かせる視点でお届けしていきます。

- 純音聴力検査シリーズ -

このシリーズでは、以下の内容についてお伝えする予定です。

・検査の重要性
・検査の性質と難しさ
正確な検査を支える環境
患者さんとのコミュニケーション
・見落としやすいポイント
・マスキングの基本
疾患や解剖生理との関連
医師と検査スタッフの連携
補聴器フィッティングへの影響
検査の限界
・理想の検査体制

今回は、第1回として「純音聴力検査の重要性」についてお話していきます。

純音聴力検査は、耳鼻咽喉科で日常的に行われている検査の1つですが、あまりに基本的な検査であるため、その重要性や難しさが見過ごされてしまうことがあります。
純音聴力検査は、聴覚診療の出発点となるため、検査精度が低く、結果にズレが生じると診断や治療方針に大きく影響します。
それによって、適切な治療や対処までなかなかたどり着けず、医療機関と患者さん双方の時間と労力を消耗することになりかねません。

つまり、純音聴力検査は単なる「聞こえの検査」ではなく、聴覚診療の方向性を決める、最重要情報と言えます。
最初の検査結果が診療全体の流れを決めてしまうこともあるため、高い精度が求められる検査です。

検査の結果にバラつきがあると、医師はその結果をもとに判断することが難しくなり、診断や治療方針の根拠が曖昧になってしまいます。
そのバラつきが「検査上の測定誤値」なのか、「疾患による変化」なのかが判断できないと、結果の解釈1つで患者さんの不利益につながってしまうことも十分に考えられます。

「検査上の測定誤値」は、検査者が耳科疾患(障害部位)とオージオグラムの結びつきを把握した上で、精確な検査手技を心がけなければ、少なくするどころか気付くことも難しくなります。
得られた検査結果の原因を推測し、検査中に測定誤値に気付くことができれば、より精度の高い検査を提供することにつながります。

だからこそ、検査者は、ある程度の経験(純音聴力検査でいえば数千件以上)を積んだ、確かな技術をもった有資格者であることが大切だと考えます。

※無資格者の聴力検査業務(健診を除く)は、法律に抵触する可能性が高いのでご注意ください。

ここでは、個人や医療機関が特定されないよう、複数の経験をもとに一般化した例として紹介します。

<ある患者さんの状況>
・A耳鼻咽喉科を受診し、補聴器適応と判定され補聴器販売店へ紹介。
・約1年前に耳かけ型(RIC)補聴器を両耳購入。
・何度も調整してもらったが、音がうるさく、自声強調がつらい。
・現在は補聴器をほとんど使用していない。
・裸耳でも少し大きめの声で会話良好。
・語音聴力検査は未施行。
・ご家族の勧めでB耳鼻咽喉科を受診。

下の結果は、B耳鼻咽喉科を受診した際に、改めて純音聴力検査を実施し、追加で語音弁別検査を行ったものです。

B耳鼻咽喉科の純音聴力検査の結果は、医師の所見や患者さんの主訴、会話の様子などと矛盾がなく、語音弁別検査とも不自然な乖離がないため、正しい検査結果と判断され、補聴器の再調整がなされました。

もし、A耳鼻咽喉科のオージオグラムのように気骨導差の解釈に迷う結果が得られたときは、

・なぜ気骨導差が生じているのか
・会話の様子と聴力閾値の乖離

を検査中に気付くかどうかが、「検査上の測定誤値」であるか、または「疾患による変化」であるのかの、1つの大きな別れ道となります。

この例では、検査精度の問題に目が行きがちですが、その後の精査まで進まず補聴器適応と判断されてしまったことや販売店で純音聴力閾値の再測定や効果測定を実施していなかったこと、適合に至っていないのに購入してしまっていることも大きな問題です。

補聴器フィッティングにおいても、出発点である純音聴力検査(測定)がズレているとターゲットもズレてしまうため、装用継続が難しくなる場合があります。
また、補聴器適合と判断できるまで想定以上に時間がかかったり、上記の例のように適合に至らないまま販売というケースも臨床現場で目にすることは少なくありません。(あってはならないことですが…)

補聴器調整に携わる方の多くは、利得調整やデジタル機能で聞こえの改善を試みると思います。
その際に、狙い通りの調整ができなかったり、主観評価と客観評価に乖離があるなど、原因に検討がつかない場合は、一度、原点(純音聴力検査)を疑ってみてください。

実は、「最初の調整から間違っていた!」とならないように、日頃の純音聴力検査・測定を改めて見直してみてはいかがでしょうか。

「聞こえたらボタンを押す」

一見単純に見える検査ですが、検査件数を経験するほど難しさを実感するのが純音聴力検査です。

実際に検査業務に携わっている方は、もしかすると聴覚検査の中で一番難しいと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。(筆者はそう思っています。)
一方で、オーダーを出す医師の先生方にとっては、身近でありながらも検査の実務的な詳細を知る機会は少ないのではないかと感じています。

次回のコラムでは「純音聴力検査の性質と難しさ」についてお話する予定です。

本シリーズのコラムで、純音聴力検査についてさらに理解を深めていただき、検査精度や検査体制を見直すきっかけになれば幸いです。

聴覚医療の質と信頼を、共に築く。

聴覚検査の精度や検査体制についてお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。
Oto Lab.はこれからも、聴覚医療に携わる皆さまを支援してまいります。

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