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【純音聴力検査シリーズ・第4回】純音聴力検査を見直す|正確な検査を支える環境

前回のコラムでは、純音聴力検査における「患者観察の視点」についてお話ししました。
今回は、第4回として、「正確な純音聴力検査を支える環境」と題し、検査室(防音室)内の環境とオージオメーターの校正についてお話しします。

今回のコラムで押さえたいポイントは、次の4つです。

・検査室環境の注意点
・理想の検査環境
・客観的点検
・主観的点検

どれだけ検査者が丁寧に測定しても、検査室や機器の状態が不十分であれば、正確な聴力閾値を得ることは難しくなります。
純音聴力検査は、聴覚診療の出発点です。
その出発点を支えるものとして、検査室内の環境や検査機器の校正・日常点検を見直すことはとても重要です。

当たり前のことですが、純音聴力検査では小さな音を扱うため、妨害騒音の少ない環境で行う必要があります。

日本聴覚医学会の聴覚検査法でも、聴覚検査は妨害騒音レベルの低い防音室で行うことが示されていますが、今回のコラムでお伝えしたいことの1つに、「防音室≠静寂下」があります。

防音室にはさまざまな大きさや構造、遮音性能のものがあります。また、同じ防音室でも、設置場所により検査室内に侵入する騒音は大きく異なります。
つまり、防音室そのもののスペックだけではなく、実際に設置した状態で、患者さんの耳の位置が十分に静かな環境になっているかを確認することが重要です

室内の空調や換気口、診察室や待合室、廊下、医療機器、道路などから伝わる騒音や振動は、日常では気にならなくても、聴力検査では無視できません。
特に低音域は環境騒音の影響を受けやすく、実際の聴力閾値より上昇してしまうことがあります。
「防音室だから大丈夫」と思わずに、検査室内の環境を一度見直してみるのもよいかもしれません。

もし防音室を新しく導入する場合には、防音室そのものだけではなく、「どこに設置するか」まで含めて考えることをお勧めします。

言うのは易く行うは難しのとおり、医療機関にとって聴覚検査を行う環境をしっかり整えることは、かなりハードルが高く、「高額で妥協せざるを得ない」とういうのが実際ではないでしょうか。
全ての耳鼻科で理想の環境を整えるべきとは思いませんが、難聴の診断を行うにあたっては、自院の検査室の特徴を理解し、結果にどのような影響を及ぼしているかなどを把握しておくと、オージオグラムを判読しやすくなるのではないかと思います。

検査室の環境で考慮すべきポイントは、以下の3つです。

・部屋の広さ
・暗騒音(できれば40㏈(A特性)以下)
・検査者と被験者の配置(同室の場合)

暗騒音を軽減し、患者さんの観察ができることを考慮すると、検査者と患者さんが同室できるくらいの広さがあると安心です。(これが最大の壁(価格が高い…!))

聴覚診療に力を入れたい、または補聴器外来を専門的に行いたいという場合は、防音室もこだわった方が良いと思いますが、一般診療での聴力検査であれば、設置場所の条件次第で小型(電話ボックス型)の防音室でも検査は可能です。
ただし、小型にする場合は、防音室を設置するための部屋(前室)を設け、防音室へ直接的な音の侵入を遮断できるように配置することが前提となります

遮音性能はデータとして出ていても、実際に患者さんの耳に届く騒音はその数値ではわかりません。

大型の防音室も同様ですが、検査室内の騒音(空調・換気口、検査機器など)と検査室外の騒音(話し声、車、機器類など)をしっかり確認し、可能な限り、暗騒音を40㏈(A)以下となるような環境を作る工夫も安定した検査を提供する上で重要となってきます。

また、大型の防音室では、患者さんが検査者の操作から検査音提示の手掛かりを得られないよう配慮することも大切です。
患者さんからは検査者の手元を見えないようにし、検査者からは患者さんの表情を明視できるような配置にすると検査を行いやすくなります。

正確な検査を行うためには、手技だけでなく、検査機器が正しく機能していることが前提になります。

客観的点検とは医療機器メーカーなどによる校正のことで、機器が正しい音圧・周波数で検査音を提示できているかを確認する作業のことです。
校正の目安は1年に1回が一般的ですが、使用頻度や機種によって適切な時期は異なるため、各メーカーが推奨する期間に沿って実施することが大切です。

校正が不十分なまま検査を続けると、いつの間にか音圧や周波数が変わっていて、本来の閾値とかけ離れた結果となる場合もありますので、定期的にメーカーへ依頼しましょう。

主観的点検は、一般的に始業時に行うもので、決まった健聴者(自分もしくはスタッフの方)の聴力閾値を測定し、普段の聴力閾値と大きな差(10㏈以上)が生じていないかを確認します。
また、測定機器が正常に作動するか、提示音にノイズや歪みがないか、応答ボタンが正しく作動するか、コードの接触不良がないかなども併せて確認します。

「オージオメーターの電源を入れたら行うもの」として、毎回の習慣にしましょう。

以上が、正確な検査を支えるための検査環境のポイントです。

客観的点検は機器の精度を担保し、主観的点検は日々の異常に早く気づくためのものです。
どちらか一方だけでは結果に影響が出る可能性があるため、点検スケジュールと担当者を決めて定期的に実施する体制を整えることをお勧めします。

検査機器によっては、誤作動や故障がほとんど起きず、長持ちするものもあり、「点検しなくても大丈夫」と油断してしまいがちですが、私自身も検査中に周波数と音圧が突然ズレてかなり焦った経験もあるため、どちらの点検も必ず行うべきと考えます。

普段からあまり意識していない方も多いと思いますので、ぜひ現状を確認するところから始めてみてください。

次回は、純音聴力検査における「患者さんとのコミュニケーション」についてお話しします。

検査前の説明や検査中の声かけ、患者さんの耳に関するエピソードなど、検査に必要な最低限の情報を集めることにより検査にどのような影響を与えるのかを取り上げます。

聴覚検査の精度や検査体制についてお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。
Oto Lab.はこれからも、聴覚医療に携わる皆さまを支援してまいります。

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