[コラム] [検査]

【純音聴力検査シリーズ・第6回】純音聴力検査を見直す|見落としやすいポイント

前回のコラムでは、純音聴力検査における「患者さんとのコミュニケーション」についてお話ししました。

今回は、第6回として純音聴力検査での「見落としやすいポイント」について取り上げます。

純音聴力検査は、手順を覚えること自体はそれほど難しくありませんが、検査に慣れてくると「いつも通り」で進めてしまい、癖が出やすく、基本的な確認も少しずつ省略されてしまうことがあります。
検査経験が少ない初心者の方よりも少し経験を積んで慣れてきた方こそ「見落としやすい」状況になりやすいので、ぜひこの機会に検査を見直してみてください。

今回のコラムで押さえていただきたいポイントは、次の4つです。

・受話器の装着
・閾値測定の進め方
・気導閾値の再確認

どれも参考書などで必ず学ぶ基本的な内容ですが、実際に現場で教わるのは大まかな方法のみで、細かい手技は本人に委ねられ、各自の方法で検査を実施している施設がほとんどではないでしょうか。
今回のコラムでは細かい手技まで説明できませんが、検査結果に影響する見落としが起こりやすいポイントを取り上げていきます。

まず確認したいのが、気導受話器の装着です。

気導受話器として一般的に使用されている耳載せ型ヘッドホンは、単純に耳に当てて装着すればよいというわけではありません。
「骨導受話器の方が装着がむずかしい」と思われがちですが、気導受話器の装着にも工夫が必要で見落としやすいポイントの1つです。(骨導受話器の装着については、参考書などに記載されていることが多いため、今回は省略します。)

気導受話器装着で確認すべきポイントは、以下の3つです。

⑴ 受話器の中心(検査音の出力部分)が外耳道入口部に正しく位置しているか
⑵ ヘッドバンドの締め具合が適切か
⑶ 受話器と頭部との間に隙間がないか

⑴ 受話器の中心(検査音の出力部分)が外耳道入口部に正しく位置しているか
耳載せ型ヘッドホンの場合は、受話器の中心と外耳道入口部をUFOキャッチャーの要領で上下と前後を合わせるように装着します。
検査者は、患者さんの正面、もしくは後方から装着するので、受話器の前後の位置を確認しにくくズレやすいです。必ず受話器の中心と外耳道入口部を最後まで目視しながら装着するようにしましょう。

⑵ ヘッドバンドの締め具合が適切か
ヘッドバンドの締め具合は、少しきつめに、左右の締め具合のバランスを揃えることがポイントです。
患者さんが不快にならないようにと、ヘッドホンを優しくふわっと装着してしまうと、低音域(とくに125~500Hz)の閾値が上昇してしまうことがあり、疾患の鑑別にとくに重要な低音域の閾値が不正確になってしまいます。
ここが気導受話器の装着の肝といっても過言ではありませんので、患者さんに気を遣いすぎずにグッと締めると、正確な結果を得られやすいです。(もちろん締めすぎると痛いです…。)

⑶ 受話器と頭部との間に隙間がないか
これも⑵と同様に重要なポイントになります。
ヘッドバンドの締め具合が緩かったり、ヘッドバンドの位置が悪いと受話器の前上方(目尻の方)あたりに隙間が生じます。
隙間が大きければ大きいほど⑵でお話した低音域の閾値が上昇してしまう原因となりますので、十分注意してください。

気導閾値も受話器の装着が不適切であると本来の閾値より大きな差が生じ、診断、治療方針、補聴器フィッティングなど聴覚診療の出発点がズレてしまいます。
「受話器の装着次第で、聴力検査の正確性が決まる」といえるほど重要なポイントになりますので、受話器装着は、気導・骨導ともに精確に行いましょう。

純音聴力検査シリーズの第3回で「患者観察の視点」として、閾値測定時の患者さんの応答について触れましたが、今回は検査者の閾値測定の進め方についてお話します。

一般的に閾値測定は「上昇法」により閾値を求めます。
上昇法の基本的な流れは、以下の通りです。

⑴ 聞こえないレベルの音から1~2秒間提示しながら5dBずつ上げていく
⑵ 一度応答が得られたら、応答があったレベルから5dB上げる
⑶ 応答があったレべルから10dB下げる
⑷ 再び5dBずつ上昇させる
⑸ ⑴~⑷を繰り返して3回中2回、または5回中3回応答があったレベルを閾値とする。

(この基本が曖昧な方は、Hughson-Westlake法で検索してみてください。)

上記の方法では、音圧を上げるスピードや検査音の提示時間などがある程度決まっていることが分かります。
このように決まったスピードとタイミングで検査音を提示し続けると、患者さんは自然と「そろそろ音がきそう」とタイミングを計れるようになります。その結果、検査音が聞こえていなくても応答してしまうことが増え、検査者が誤応答を閾値としてしまう可能性が高くなります。

こういった、一定のタイミングで検査音を提示することを防ぐため、音圧を上げるスピードに緩急をつける=音圧を上げている途中で検査音を提示しない“間”を作ることをお勧めします。
簡単にいうと、タイミングをずらして患者さんが検査音提示の手がかりをつかみにくくする、ということです。

音圧を上げていきながら閾値を測定するという上昇法の基本は守りつつ、ときどき無音の“間”をつくってタイミングをずらしながら検査を進めると、誤った応答と正しい応答の判別がつきやすくなります。

第3回のコラムでもお伝えしましたが、純音聴力検査は「駆け引き」が重要です。
(ふざけているわけではなく)わざと検査音を提示せず様子をみるような、検査にはちょっとした意地悪をすることも正確な結果を得る上で必要なスキルとなりますので、ぜひ試してみてください。

最後の見落としやすいポイントとして、「気導閾値の再検」についてです。

得られたオージオグラムが、気導閾値<骨導閾値であったり、特定の周波数だけが不自然な骨導閾値となった場合に、みなさんはどのような対応をしていますか?
骨導受話器の位置を修正してみたり、マスキングを確認しながら骨導閾値を再測定するなど、骨導に着目することが多いのではないでしょうか。

しかし、間違えてしまうのは骨導閾値だけではありません。「骨導閾値の方が間違えやすい」ということはその通りですが、「気導閾値だって間違える」ということを忘れてはいけません。

骨導再検後に閾値が変わらなかった(不自然な値のまま)場合に、そのまま検査を終了するるのではなく、「気導閾値は正しかったのか?」を確認するために気導閾値まで再検することが重要なポイントです。

気骨導ともに十分に確認しながら再検し、これ以上やれることがなくなった末に得られた結果は、もともとそのような聴力である可能性もあるため、素直に医師に報告しましょう。
もし不自然な結果でも、過度に再測定を繰り返すことは患者さんの集中力低下を招いたり、自分の予想や願望に結果を寄せてしまい、誤った診断・方針決定の原因となりかねませんので控えるべきだと思います。

「骨導は間違えやすい」からと言ってそちらばかり注意をむけるのではなく、「気導だって間違える」ということも念頭に置いて検査に取り組んだり、結果を判読することをお勧めします。

今回は純音聴力検査の「見落としやすいポイント」についてお話ししました。
そんな細かいところまで考えて検査をしなければならないのか?と思われる方もいるかもしれませんが、聴力検査は聴覚診療の出発点であり、難聴診断の最重要情報の1つですので、細部まで意識して検査に取り組んでいただきたいと思います。

次回は、ついに「マスキングの基本」について取り上げます。
純音聴力検査の最大の障壁であるマスキング。足し算と引き算の問題であるはずなのに、考えていると途中からよくわからなくなるという方も多いと思います。(私自身、最初はよくわからなかったので、悪い方の気導閾値と同レベルのノイズを負荷していました。今考えると恐ろしい…笑)

どこまで説明できるがわかりませんが、まずはマスキングを理解する上で必要な知識などを中心にお話しできればと思っていますので、引き続きホームページをご覧いただけますと幸いです。

聴覚医療の質と信頼を、共に築く。

聴覚検査の精度や検査体制についてお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。
Oto Lab.はこれからも、聴覚医療に携わる皆さまを支援してまいります。

Contact

お問い合わせ

サービスに関するご質問やご相談など、
お気軽にお問い合わせください。
現状をヒアリングさせていただき、
ご要望に沿ったサポートを提案します。